SHERBETSのHEART BREAK TOURファイナル!
2011.07.22この日のSHERBETSは凄かった。
とにかく演奏の緊張感がビシビシ伝わってきたのだ。1曲目の「Motor Blitz Breakers」から、アンコールのラスト「わらのバッグ」までずっと。一瞬それが緩んだのは「Neighbourhood Funky Special」で、浅井が歌詞を変えて〈イスから滑り転んでる仲田君〉と、ベースの仲田憲市のことを唄った時と、アンコールで〈ウィーアーシャーベッツ……解散しそうになったぜ〉と浅井が照れながら言い、仲田が〈……スマン〉と笑ったところくらい。あとは常にピリっとしていた。「シェイクシェイクモンキービーチ」でも、浅井のキーワードにメンバーが即興で答えていくおなじみの掛け合いもなかった。その緊張感が演奏を引き締め、SHERBETSの持つ静謐さを引き立てていた。
やはりこれは、ニュー・アルバム『FREE』制作中に、解散一歩手前までバンドが追い込まれたことが影響しているのだろう。大切な場所であり、必ず戻ってくる場所でもあるSHERBETSに、メンバーも気づかないうちに甘えていたのかもしれない。いつでもある、という安心が、バンドへの向き合い方を徐々に変えていた。それがフラットに戻ったというか、友達としてではなく、まずミュージシャンとしてのプライドで音を鳴らしていた。そしてSHERBETSの持つ、純粋さや優しさだけではなく、どこにも居場所がないままヒリついて離れない孤独を感じさせたのだ。
ゆえにニュー・アルバムの『FREE』の収録曲はもちろんだが、「ハイスクール」や「カミソリソング」、そしてライヴでやった記憶があまりない「愛はいらない」が輝きを放っていたのだ。そしてそのような緊張感が、ラストの「わらのバッグ」に唄われた、自分たちひとりひとりにある美しさのように、あたりまえだが気づいていないことを、メッセージとして僕たちの心にもたらしたのだ。
本当に素晴らしい一夜だった。今後の活動はまだアナウンスされていないが、この緊張感を保ったまま、新たな活動に向かって行ってほしい。今のSHERBETSが鳴らす音がもっと聴きたい。
(文=金光裕史 撮影=岩佐厚樹)