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秦 基博「GREEN MIND 2011」

HATA MOTOHIRO PRESENTS

AN ACOUSTIC LIVE:GREEN MIND 2011。

毎年5月4日に行なわれている秦 基博のライヴイベント。今年は彼の故郷でもある宮崎県のフェニックス・シーガイア・リゾート、イベントスクエアで開催された。会場は緑の芝生が美しい広場。ステージの裏には木々が並び、これまで行なわれたGREEN MINDのライヴの中でも、そのイメージに近い場所になった。前日からの雨も止み、ライヴが始まる頃には太陽が顔を覗かせ、汗ばむほどの陽気となった。

14時開演。「アイ」をアコギで唄い上げた彼は、ゆっくりと語りかけるようにMCを行ない次の曲へ。少し緊張気味なところはありつつも、その肩の力が抜けた感じが、会場にリラックスしたムードをもたらす。いきなり立ち上がるでもなく、芝生に座ってゆっくりと、彼の歌声を聴いて楽しんでいる。後ろでは親子連れが、シャボン玉を吹いて遊んでいる。寝転がって観ている人もいる。その自由に楽しめている空気が素晴らしい。

本誌で連載中の「チャレンジ学習帳」で制作した木のハイチェアーに座って(註:次号で制作の様子を掲載します!)新曲の「水無月」も弾き語りで披露。311以降の彼の心境が表れた曲。戸惑いながら、震えながら、前に進んでいこうとする気持ちが表れていた。さらに「青い蝶」では、ピアノに島田昌典が登場。ここからは秦曰く“リレー方式”で、島田含めた3人のミュージシャンを呼んでのセッションが続く。だんだんとアレンジもアッパーなものになっていき、「今日もきっと」で客席は総立ちに。しかしあくまで弾き語りの良さに彩りを添えていくアレンジは変えない。それが良かった。客席もその空気を楽しみ、自然な一体感で盛り上がっていく。

その中でも圧巻だったのは「猿みたいにキスをする」での、再び島田が登場して行なわれた久保田光太郎と3人のセッション。レコーディングもこの組み合わせで行なわれているわけだが、より繊細に、主人公の切ない衝動をかき立てていく。

ライヴは後半に進むに従って強さを増し、メッセージ色も強くなっていった。「フォーエバーソング」の風景は、秦は意識してないと言うが、なんとなく彼が過ごしてきた故郷の風景を思い起こさせた。そして「鱗(うろこ)」から「ドキュメンタリー」の流れは圧巻だった。〈見にまとったものは捨てて 泳いでゆけ〉と「鱗(うろこ)」で唄った男は〈振り返り独りきり 歩き始めたっていうのに涙こぼれそう〉と唄うようになった。その先に、ただ行くだけじゃなく、哀しみや痛みがあり、それを越えて行かなきゃいけないことを、それを抱えて踏み出して行かなきゃいけないことを、今の彼は知っている。新曲の「水無月」にもそれがある。デビューから5周年。彼の成長と意識の高まりがよくわかる瞬間だった。

「水無月」のPVシューティングを挟んでのアンコールは「風景」と「新しい歌」。中でも「新しい歌」は、このイベントを宮崎でやろうと彼に思わせた口蹄疫問題や、東日本大震災といった悲しい出来事の中で、また違う顔を見せた。〈空をよぎる悲劇も この苛立ちも いつか消える日が来るのかな〉というフレーズが、胸に迫った。

今秋に行われるデビュー5周年記念ライヴ、10月28 日の福岡市民会館、11月5日の日本武道館、11月10日の大阪城ホールも発表された。改めて、彼の原点を噛み締めながら、大きく成長したその姿を感じた今年の“GREEN MIND”だった。(金光)

HATA MOTOHIRO PRESENTS

AN ACOUSTIC LIVE:GREEN MIND 2011

SET LIST

1.アイ

2.やわらかな午後に遅い朝食を

3.oppo

4.虹が消えた日

5.水無月

6.青い蝶

7.朝が来る前に

8.Selva

9.青

10.今日もきっと

11.SEA

12.キミ、メグル、ボク

13.プール

14.猿みたいにキスをする

15.色彩

16.赤が沈む

17.フォーエバーソング

18.シンクロ

19.鱗(うろこ)

20.ドキュメンタリー

encore

1.風景

2.新しい歌

編集スタッフ

金光裕史

樋口靖幸

平林道子

竹内陽香

小高朋子