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DIR EN GREY【SONISPHERE FESTIVAL】速報

はやっ! ライター増田さんから写真とレポートが届きました。
「LIE BURIED WITH A VENGEANCE」の間奏部分でIRON MAIDENの「PROWLER」のフレーズをインサートしたんだと!?
 み、観たかった……(樋口)。

英国激震!! DIR EN GREY 【SONISPHERE FESTIVAL】速報

 7月30日から8月1日にかけての3日間、まさに日本が『FUJI ROCK FESTIVAL ’10』の話題でもちきりだった頃、イギリスのロック・ファンは『SONISPHERE FESTIVAL』に熱中していた。ヨーロッパでは唯一、ツアー形式で行なわれているこのツアーは、この夏、ポーランドやスペイン、フィンランド、スイスからトルコに至るまでの各国をまわり、この時期に最終着地点である英国はロンドン郊外のネブワース・パークに到達。出演ラインナップは開催地により異なっていたが、この英国版での最大の呼びものは、なんといってもニュー・アルバムの発売を間近に控えたIRON MAIDENということになるだろう。なにしろこの国民的バンドにとって今年初となる母国でのライヴが、この『SONISPHERE FESTIVAL』の場で実現することになったのだから。
 そのIRON MAIDENと同様に公演最終日にあたる8月1日、同フェスに参戦していたのがDIR EN GREYだ。彼らはIRON MAIDENをヘッドライナーとするメイン・ステージではなく、IGGY&THE STOOGESやTHE CULT、BRING ME THE HORIZONと同じセカンド・ステージに登場。各日とも5万5,000人もの動員を記録し、チケットもソールドアウトに至っていたという事実からも明らかなように、広大な敷地内の人口密度は異常なほど。セカンド・ステージ周辺には、熱心なDIR EN GREYファンが午前中のうちから多数詰め掛けていたが、午後2時20分、彼らの演奏が開始されると、その轟音に吸い寄せられるようにして周辺一帯は見渡すかぎり人、人、人、という絶景となった。
 イギリスは天候の不安定さでもよく知られているが、朝から曇天で雨を覚悟せざるを得ない状況にあったこの日、彼らがステージに立つ頃になると太陽が顔を出し、意外なほどの好天に。ステージ転換中から「DIR EN GREY!」コールを発していたオーディエンスは、オープニングSEの「SA BIR」とともにメンバーたちが姿を見せると狂喜し、オープニング曲の「激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇」が炸裂すると、激しいヘッド・バンギングでそれに応酬。彼らの演奏時間はわずか40分間というコンパクトなものだったが、この曲で幕を開け、「残」で着地するという徹底的に“攻め”モードのステージは、それでも充分に起伏やコントラストを伴いながら、凝縮感をもってこのバンドの“今”を提示する結果となった。
 中盤に据えられた「DOZING GREEN」の醸し出すミステリアスな空気感と落差の大きさ、京の狂気がオーディエンスの目と耳を釘付けにした「AGITATED SCREAMS OF MAGGOTS -UNPLUGGED-」、メタル・ファンたちの同調ぶりが伝わってきた「凱歌、沈黙が眠る頃」など、特筆すべき点は多々あったが、筆者が何よりも驚かされたのは、3曲目の「LIE BURIED WITH A VENGEANCE」だった。その間奏部分、Dieがいつもと違ったフレーズを弾き始めると、なんとそこから曲は、初期IRON MAIDENの看板曲、「PROWLER」(1980年発表の同バンドのデビュー作、『IRON MAIDEN/鋼鉄の処女』に収録)へと展開。要するに「LIE BURID~」の中盤に「PROWLER」のイントロ部分が挿入されたカタチで披露されたのだ。そのフレーズに引き寄せられてセカンド・ステージ側に集まってきたIRON MAIDENファンも少なくないはずだし、英国の怪物バンドに対するDIR EN GREYからの敬意も、きっと届いたことだろう。同時に、最前列で熱狂する明らかに十代とおぼしきDIR EN GREYのファンたちが、ちゃんとこの「PROWLER」のフレーズに反応していた事実も付け加えておきたい。
 DIR EN GREYの演奏終了から5分後、メイン・ステージにはSLAYERが登場。そして以降、5人のメンバーたちは10本を超える現地メディアからの取材や、英国のヘヴィ・ロック専門誌『KERRANG!』の主催によるサイン会にも対応。そこではDIR EN GREYのみならずIRON MAIDENやSLAYER、RAMMSTEINのTシャツに身を包んだファンたちが長蛇の列をなすことになった。まさに分刻みのスケジュールに追われる状況にあったため、残念ながら彼ら自身には他の出演者たちのステージを観ながらフェス気分を満喫することができなかった。が、演奏終了直後、ステージから楽屋に戻るまでの間に関係者たちから寄せられた絶賛の声の多さ、楽屋を訪れた現地有力者たちの熱っぽい言葉などからも、今回のフェス出演が彼らにとって非常に有意義なものとなったことは疑う余地もない。
 ちなみに『SONISPHERE FESTIVAL』自体は今年が2回目の開催となるが、過去30年、このネブワース・パークではLED ZEPPELINやQUEENの公演をはじめ、数々の伝説的ライヴが行なわれてきた。その長く濃い歴史のなかにあっては、DIR EN GREYがそこに残したものはさほど大きいとは言えないかもしれない。が、間違いなくそこには、しっかりと彼らの爪あとが刻まれているはずなのである。
 また、蛇足ながら最後に付け加えておくと、メンバーたちが『SONISPHERE FESTIVAL』での熱狂の余韻を味わっていた頃、日本では10月に開幕を迎える次期国内ツアーに関する情報が公開されていた。8月末から9月にかけては北米ツアーも決まり、まさに地球規模で展開されているDIR EN GREYの『THE UNWAVERING FACT OF TOMORROW TOUR2010』。この先の動向からも、目を離さずにおきたいところだ。

文/撮影●増田勇一

DIR EN GREY 【SONISPHERE FESTIVAL】 SET LIST
激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇
AGITATED SCREAMS OF MAGGOTS
LIE BURIED WITH A VENGEANCE
DOZING GREEN
OBSCURE
凱歌、沈黙が眠る頃
THE FINAL
冷血なりせば

編集スタッフ

金光裕史

樋口靖幸

平林道子

竹内陽香

小高朋子